メタファのメリットとデメリット
メタファ (metaphor)とは,隠喩,「たとえ」のこと.
インタフェースの設計にはメタファがよく用いられる.例えばコンピュータの操作画面で,お馴染みの消しゴムアイコンや鉛筆アイコンはオフィスメタファによるものである.コンピュータの学習の初期段階でメタファと新しいものの特性(コンピュータの画面上で絵を消すことができるという機能)が密接に関係している時,メタファをデザインに取り入れることは有効である.そのためメタファは万能であると考えてしまう.
しかし,多機能化のため多用されるとアイコンのデザインが似てしまい,ユーザは操作を間違ってしまう.CADのソフトウェアの場合なども似かよったアイコンが多くて扱いにくい.もはやメタファに頼ることが困難さを招いている,といってもよい[註1].
もともと実際のモノとは全く違うのだし,メタファは同じでないモノを同じように見せようとする企てにしかすぎないのであるから,実は間違っても不思議ではないのである.更にメタファは文化や習慣によって異なるため万人に使えるとは限らない.このように考えるとメタファに頼った万人に使いやすいインタフェースはありえないのである.
だが,あるテクノロジーによって,違う違うという時の手の動き,消しゴムを使うときの手の動き,その身体的動作だけを高精度に感知して消すという機能が働けば,消しゴムアイコンというメタファは不要になる.
例えば,今でこそジョグダイヤルは当たり前のように使っているが,ジョグダイヤルが初めて機器に搭載されたとき,ユーザはすぐには操作できなかった.何故ならユーザは回せても,押せば機能を選択し,決定できるという概念モデルを持ち合わせていなかったからである.しかし,ほんのわずかな学習で操作できてしかも概念モデルとして形成することができた.
別の例としては,PDAで文字の拡大縮小,地図の拡大縮小も非常に薄い画面(本体を含む)を内側に曲げたり外側に曲げたりすることによって可能となっている.この動作は理にかなっている.
このように,新しいテクノロジーはもちろんのこと,明快な操作と非常に単純明快な身体的動作を伴った学習によって,ユーザに新しい概念モデルを形成させることは可能である.そしてその概念モデルをもって更に新しい概念モデルをユーザに形成させることが解決策の一つになるのである.
[1]アイコンは絵柄だけでなく,文字を加えることによってメタファに頼らなくてもよくなる.
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